オジン機長その3  スズメのつがい

スズメのつがい

 9月の末早朝に目が覚めた。

 窓を開けベランダを寝ぼけた眼で見ていると、スズメのつがいが仲良く、1匹の虫をお互いに食べながら、遊んでいる。

 チッチッと鳴きながら戯れている。

 スズメがチュンチュンと鳴くのは春だけだと教わったと,とうりである。

 一つの餌を2匹で食べて楽しそうだ。

 見ていると1匹がもう1匹に口移しに餌をやっている。

 若い二人がチュ-をしているみたいだ。

 俺たち二人にもそんな時代があったな-。

 白けた夫婦、疲れた夫婦、老年の夫婦。

 時間が流れているのを感じる。

 2匹のスズメのつがいが戯れている途中にもう1匹のスズメがやってきた。

 たちまち始まる餌をめぐっての戦い。

 邪魔が入ったつがいのスズメは、お互いに別な行動をする。

 3角関係の中か。

 スズメも人間も同じ行動をするものだ。

 子供達がまだ、小さいころ、オヤジの俺は大きなザルとすり鉢の棒に紐をつけ、スズメを捕まえようとした。

 ザルに紐をつけた棒を立てかけ、下に米を巻いてベランダに置く。

 ベランダの窓に隠れてスズメの出現を待つ、

 子供達よ見ていろよ。

 スズメを獲って今夜は焼き鳥を食わせてやるからな。

 幼い子供2人とじっと窓際でスズメを待った。

 スズメがやってきた。

 ザルの中のお米を食べだした。

 今だ、ひもをひけ。

 動くな、声を出すな、子供は声を出す。

 スズメはお利口だ。

 さっと、ざるの外に逃げ出し、逃げてしまう。

 見事空振りのザルをまた元どうりにしてスズメを待っていたが、スズメは2度とやってこなかった。

 スズメは。お利口なのだ。

 俺の少年時代、昭和20年代は、道路を走る車は少なく、馬の引く馬車が通行していた。

 いたるところに、馬糞があった。

 悪ガキの俺たちは休んでいる馬のしっぽの毛を抜く。

 馬に蹴とばされないように抜くには度胸と勇気が必要だった。

 その馬の毛でスズメや小鳥を獲る罠を作った。丸い、わっかにして、スズメの首が入ると引っかかる仕組みにする。

 その罠を雪解けの、田んぼの近くの小鳥が来そうな場所に罠を置く。

 周りにまく、お米がないので、ヒエやコリャンを撒いて小鳥を待つ。

 ヒヨドリメジロなどが罠にかかったこともある。

 その小鳥を焼き鳥にして家族で食べた、

 タンパク質の食品や食料が十分にない時代だったので、特に美味しく感じたのかもしれない。

 平和な朝のスズメのつがいの、動きを見て食糧難であった少年時代まで思い出した。

 スズメ君、仲良く元気に長生きしろよ。