オジン機長 その3  相撲

相撲

 11月の相撲がテレビで放映される。

 俺の、日課にテレビの相撲観戦の時間が食い込まれる。

 若いころ相撲の選手で沢山の観衆の前で相撲をやった経験が今でもテレビの相撲観戦になるのであろう。

 毎年、若いころ勤務した自衛隊では、11月になると各部隊対抗の相撲大会があった、

 部隊で優勝すると、今度は全国大会があり、相撲選手には、忙しい時期になる。

 俺は相撲の選手ではない。

 当時はラグビーの選手だった。

 自衛隊部隊対抗戦は4人が兵隊さん、最後の大将は幹部自衛官と決められていた。

 従って幹部の誰かが出場することになる。

 お前が出ろ。上司の命令だ。

 仕方なく相撲部の面倒を見ることになる。

 稽古はラグビーの大会が終わった後にまた相撲の合宿だ、

 相撲の稽古はラグビースクラムと同じである。

 低い姿勢から相手に頭から突っ込む。

 相手の態勢を崩して押し出す。

 ラグビースクラムの要領で相撲をすると普通の人間には負けない。

 俺はスクラムの2番の選手がやるラグビーボールを足でひっかけて球をスクラムの後ろにやる動作が出来た。

 従ってどんなに俺の体重よりも太った相撲部員でも、最初の稽古では相手にスクラムの動きでぶつかり、右足で相手の右足に足をひっかける。

 ドテンーーー

 100キロ以上もある大男を倒した時の快感はたまらない。

 気持ちが良かったなー。

 しかし、相手は次の稽古からはぶつかってこないし、足も出さない。

 俺はいとも簡単に突き飛ばされるだけだ。

 俺の奇襲攻撃を知らない相手には常に勝利した。

 そのため部隊の相撲の大将、幹部自衛官は俺に決まってしまう、

 この相撲大会参加は、自衛隊を辞めるまで上司命令で実施しなければ、いけなかった。

 そんな事情で今でも相撲テレビ放送を見る習慣になったのかもしれない、

 俺の技は同時、岩国という関取がいつもやっていた技だ、

 ヒッカケという。

 最近の相撲の決まり手で、ヒッカケの技を出す力士はいない。

 それにししても、沢山の観衆の前で200キロもある大男を引っかけて土俵上に仰向けに倒した快感は忘れられなれないなーー。

 俺にも若い時があったのだ。

 相撲も強かったのだ。