線香花火

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線香花火

 家内と家の近くの大きな、スパーに買い物に行った、

 大きなスパーの中には、あまり目立たないところに、ちょっとした、休憩所と、軽い飲み物が売られている。

 忙しいお客様はあまり、ここには立ち止まらない。

 大きな看板で北海道フエアー、ソフトクリームの文字があったので、俺は足を止めた。

 奥さん、ソフトクリーム、しょうがないわね。

 子供と同じね、うるさい。

 誰もお客がいないので、ゆっくり出来る。

 ソフトクリームを楽しもう。

 あんた、400円もするのよ、あんたの今日の昼ご飯の弁当299円。 うるさい。俺はソフトが食べたいのだ。

 家内が買ってきたソフトクリームを舐めたが、北海道の味はしない。

 これは、偽物だな、俺の味覚が衰えたのか、まあいいか。

 ソフトクリームを買った家内の手には、花火がある。

 お孫さんと、花火をしなさいとサービスしてくれたという。

 サービスの花火なので線香花火が半分はある。

 線香花火か、懐かしいな。

 子供達がまだ小学生のころは、家の庭先で線香花火を楽しんだものだ。

 チリチリと火花が音を出しているように感じる線香花火、

 我が家の子供たちと一緒の幸せだった時間。

 その子供たちも大人になり、俺たちとは、もう遊んでくれない。 

 線香花火は灼熱の火球から松葉の光が散り、テンポを早めた後、菊花の様に放物線を描いて、たれ落ちていく、

 今はこの世にいない親しかった、人々の記憶が呼び返される。 (物理学者、寺田寅彦の随筆より。)

 俺の少年時代昭和20年代には、線香花火で遊んだ記憶はない。

 ジャガイモや、サツマイモの混じったご飯を食べ、いつも腹が減っていた。

 防空壕の中から見た、米軍の飛行機が機銃の弾を発射していたが、あれが花火か。

 子供達と一緒に庭先で線香花火を行えた時は、我が家の最高の幸せの時間だったのだ、

 家内がソフトクリームの景品でもらった来た、線香花火。

 老夫婦で楽しもうか。

 バーサンやジーサンや、ご先祖様を思い出し、線香花火を楽しもう。

 いつまで、ボケッとソフトクリームを舐めているの。 

 忙しいのよ、 早くしなさい。 

 

 現実は厳しい。