脱出訓練その2

 脱出訓練 その2

 昭和30年代の海上自衛隊の操縦士訓練は、戦時教育の延長線に近いものがあった。

 教官は、ほとんどが戦争経験者。

 海軍兵学校陸軍士官学校予科練出身者、時たま、戦時中の民間航空出身者。

 それぞれが自分の過去の出身にプライドを持っていた。

 あいつは海兵何期生、あいつは予科練,甲だとか乙だとか、俺には良くわかない、話を担当教官から、聞いたことがある。

 訓練も旧海軍の教育に近く、罰チョクや、海軍精神を教えられたものだ。

 現在の教育のパワハラ、セクハラの問題の話どころではない。

 しかし、激しい訓練の中にも、現在には、掛けてきた、情けや、やさしさも、沢山あった。

 苦しくても、楽しかった、30年代の操縦士訓練、懐かしい。

 その当時受けた、飛行機からの脱出訓練を思い出す。

 プールの飛び込み台より、プール水面まで、滑り台を作る。

 飛び込み台の上には、操縦席のシートのソリのようなもの作る。

 その、そりの操縦席に、ベルト、肩バンドで、、縛られる。

 それ行け

 滑り台を、縛られたまま、、滑り。プールの水面にボッチャン。

 操縦席に縛られたまま、水中の中へ、

 素早く、ベルト、ショルターハーネスを外す。

 水の中なので焦ると、中々うまく、ベルタが、外れない。

 あせるな、落ち着け。水を飲んでしまう。

 水中眼鏡を付けた、教官も一緒に潜り、救助に、当たる。 

 訓練生が、うまくベルトを外せないときには、水中の教官が外してくれた。

 落ち着いて、訓練の手順通りやれば、全然問題は、ない、

 しかし、度胸のない奴は、焦ってしまうのだ。

 水中で眼鏡を付けた教官と、俺の目が合った、

 笑っていたな、この野郎、負けてたまるか。

 見事、ベルトを外して、プールの水の上に浮かびあがる。 プアー

 プールの水をがぶりと、飲んでしまった。

 ゲボゲボ、苦しかったな。

 飛行機からの、水中脱出成功。

 合格、訓練続行。

 こんな乱暴な脱出訓練を受けた、ものだ。

 令和時代の現代、こんな訓練は、やれないだろう。実際やっていない。

 昭和30年代の訓練生の、俺たちだけだ。

 懐かしい、頑張った、俺の青春、