ほうれん草のオシタシ

                            横浜赤レンガ倉庫

ほうれん草のおしたし

 数十年前にある成功した大きな工務店の社長の講話を聴いた。

 社長の社員教育はホウレンソウだという。

 つまり

 報告する、連絡する、相談する。

 この3個を大事に実施すれば・、仕事は上手くいくという。

 なるほど。

 今日行った、作業の経過報告は大事だ。

 作業の進行状況は、社長以下全員が知っている事。 

 作業の前の日には、関係部署に事前に連絡して、今日の作業をスムーズに進める。

 そして、自分のできないことや、仕事上の出来ないことには、仲間や上司に相談する。

 ほうれん草で会社は成長したという。

 もっともなことだ。それにしても

 昭和の大工さんはかっこよかったな。

 はげ頭に手拭いを巻いて、新築の家の前で カンナで家に使う材木を削る。

 すごい技術が必用だった、

 シュウーーーシュウーー

 子供の俺は飽きずに眺めていた。

 そして、口に釘を何本か、含み、口の中から、1本づづ、出して、トンカチで板に打ち付ける。

 子供の俺は真剣に、大工さん誤って、飲み込まないかなと心配したものだ。

 令和の時代の大工さんは、出来るかな。

 現在は、あらかじめ機械で作った、家の部品をコンテナで運んできて、重ねて、ノリ漬けして、家の形にしてしまう工程だ、ものな。

 大工さんの仕事も時代と共に変わってきた。

 あの、工務店の社長は今でも、ほうれん草と言っているのか疑問だ。

 時代は移り変わる。

 人間も前の時代とは異なる。

 現在の若者は3Kを嫌う。

 汚い、きつい、危険な仕事はしない。

 困ったものだ。

 しかし工務店の仕事はしなければいけない。

 最近は、ほうれん草のオシタシで社員教育を行っているという。

 社員には、怒らない、否定しない、助ける指示する。

 オシタシ、オシタシ

 社長はイライラするだろうな。

 昔は、大工の技術は、眼で盗めと教えられたものだ。

 親方は、何にも教えてくれないという、大工さんの愚痴を聞いたものだ。

 現在のなんにも出来ない若者の大工に怒りたいのをじっと我慢して、親切丁寧に、教えなければ、工務店は成り立たない。

 何にも知らに癖に、勝手に現代風に作業をする若者の言い分も否定しないで、聞かなければならない。

 工務店の社長も若者教育には、昔のようなことは、出来ない時代になった。

 これがいいのか、悪いのか。

 俺には、分からない。

 古い人間になってしまった俺様が、ここにいる。